……夕貴は、ずっと、力を失った遼の上体を背後から抱きとめている。
どうやって自分の足袋にまで手が届いたのだろう。
遼はそっと目を開け、暗い夜空を見上げ、沈む月に照らし出されるその場の
光景を見下ろし……そして、すべてが凍りついた。
【遼】
「あ……うぁ……」
夕貴の熱を持った手は、さっきからずっと、遼の衿もとで遊び、
あるいは長着の帯にからんでいた。
今、胸の先をくすぐり、脇腹を這い上がり、足に巻きつき、
袴の奥まで潜り込み、敏感な部分と戯れているのは、
それは、人の指ではなく――
【夕貴】
「駄目」
夕貴がどこまでも穏やかに優しく囁き、遼の震える手を上からそっと抑えた。
【夕貴】
「好きにさせてくれるんでしょう?
それに、今の遼の身体はどうしたって動けないはずだよ」
【夕貴】
「無理に暴れようとしたら後で辛いだけだから、ね、いい子にしていて」
甘い声で耳をくすぐられる間も、それは数を増し、夕貴がくつろげた
着物の裾からするりと這い上がり、潜り込み、じかに遼の肌へと絡みつく。
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