その時、部屋の中が少し翳った気がした。
何気なく顔を上げ――息が止まるかと思った。
障子の向こうに、誰かが立っている。
子どもだ。
和服を着た子ども。
――何故こんな時間に子どもが?
【透夜】
「……君は誰だい?」
そっと問いかける。だが、子どもは答えようとはしない。
腰高障子の中程に走るガラスから透けて見える胴は、
息をしていないのではないかと思うくらい、ぴくりとも動かない。
【透夜】
「どこの子? 何故こんな時間に――」
【???】
「ぼくをさがして」
たどたどしくか細い声が答えた。
【透夜】
「え……?」
【???】
「ぼくをたすけて。でないと」
【???】
「――こわいことになる」
【透夜】
「!!」
――消えた。
引きつるような声が漏れた。
今、自分は何を見た。
闇の中で目を懲らす。
だがそこにはもう、誰も居なかった。
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