【???】
「……びっくりした」
子供のように頼りなげな声をしていた。
柔らかそうな髪が濡れて額に張りつき、その表情をひどく幼げに見せた。
【???】
「声が聞こえたような気がして、振り向いたら……足を滑らせてしまった」
自分はそんなに大きな声をあげただろうか。恐縮して頭を下げる。
【透夜】
「えっと……脅かしてごめん」
少年が目を見開く。
【???】
「どうして謝るの?」
【透夜】
「だって、俺が脅かしてしまったんだろう?」
【???】
「…………」
彼は答えず、透夜を見上げている。頬が僅かに上気していた。
瞳が輝いている。
【透夜】
「……えっと」
調子が狂う。戸惑って頬を掻いた透夜は、ようやく思いついて、
彼に手を差し伸べた。
【透夜】
「手を貸すから、上がってきたら? 風邪を引くよ」
【???】
「うん」
透夜が差し伸べた手に、少年の手が重なる。
――華奢だ。骨の作りがまるで違う、細く冷たい手だった。
壊れ物にでも触ってしまったようで、どきどきする。
【透夜】
「あ、そうだ、君、この辺で子どもを見なか――」
だが、それ以上続けることは出来なかった。
水の中から起きあがった彼の腕が、透夜の背にするりと回ったのだ。
【透夜】
「え……?」
唖然として、それから頬がかっと熱くなった。
背中に回った腕も、手と同じように細い。
包み込むようにやんわりと籠められた力。
【透夜】
「え!? えっと、な、なに――!?」
小さな頭が、透夜の胸にことりと落ちる。
【???】
「……お帰り、透夜」
【透夜】
「…………」
その言葉を聞いた途端、胸に言いようのないものが湧き出でた。
胸を締め付けられるような、甘い――
同時にそして、胸のどこかがちくりと痛んだ。
針で刺されたように、じくじくと痛む。
指先が震えた。
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